診断・治療
肝臓センターについて
2010年4月より大阪府がん診療拠点病院に指定されています。診断・治療が困難な肝胆膵領域の疾患をより専門的に診療するため、2011年8月から肝臓センターをオープンしました。名称は肝臓センターですが、肝臓だけでなく胆嚢や胆道、膵臓の悪性疾患、ウィルス性肝炎、急性肝炎などのを治療しております。肝臓外科・肝臓内科・消化器内科・放射線科・病理部などの専門領域の医師がチームとして協力し、診療ガイドラインに沿った標準治療で質の高い医療を提供しております。
当センターで行っている治療のご紹介
@ 外科手術(切除術)
T. 超拡大手術
当センターの外科治療は、系統学的肝臓切除から直接浸潤をきたした周囲の臓器を含めた切除や、血管を合併切除する難易度の高い手術も行っております。標準治療を行う一般病院では切除困難と診断された巨大肝細胞癌や転移性肝腫瘍、血管合併切除を必要とする肝門部胆管癌や膵頭部癌に対し、適応に応じて門脈・下大静脈・肝動脈を合併切除することで、癌違残をなくすことを目指した手術を積極的に行っています。進展度診断が重要となる胆管癌や膵癌では、病理医との連携により術中迅速病理検査を行って完全切除を目指しております。 肝細胞癌や転移性肝腫瘍、胆管癌については初診時に切除困難であっても、カテーテル治療や術前化学療法の施行、残存肝機能を維持できるように切除側の門脈塞栓術を行うことで安全かつ治癒できる手術が行えるよう工夫しております。また再発性肝腫瘍においても適応があれば再肝切除術やラジオ波焼灼術などを積極的に行うなどの治療を提供しております。
U. 腹腔鏡下肝臓手術
2012年4月の保険診療改定により腹腔鏡下による肝臓部分切除術および外側区域切除術が保険適応となりました。これに伴い当センターでも施設基準をクリアし、腹腔鏡下肝切除術を開始しました。当院外科では胃や大腸の悪性腫瘍、胆嚢摘出術や鼠径ヘルニアなどの良性疾患に対する腹腔鏡手術を多数行っており、外科とも協力して肝臓切除術にも応用しております。腹腔鏡手術であっても癌に対する根治性は維持し、小さな傷により体への負担が少ないため入院期間を短縮できております。治療方針の決定に肝臓の生検が必要な場合でもご相談ください。
A ラジオ波腫瘍焼灼術 (RFA)
小さな肝細胞癌や転移性肝腫瘍に対する低侵襲な治療法です。小さな腫瘍は悪性診断が比較的困難でありますが、腫瘍が疑われればソナゾイド造影超音波検査を行うことで良悪性の診断力を高めております。肝臓外科と肝臓内科で検討し、超音波による穿刺が可能な腫瘍に対して全身麻酔下で穿刺を行っております。全身麻酔下での治療であり、呼吸をしっかり止められるため腫瘍の中心部を穿刺しやすくなり、また穿刺に伴う痛みは大きく軽減されております。一方、現時点では肝臓切除と比較して局所再発率は高いですが、繰り返しRFAを行うなどの治療により5年生存率に差は認めません。(当センターでの治療成績より)
B カテーテル治療
カテーテル治療は、一般的には切除やRFAでの治療が困難かつ有効ではない肝細胞癌に対して行っております。抗癌剤を肝動脈から注入する経皮経肝的動脈注入療法(TAI)や、癌を栄養する動脈を詰める経皮経肝的肝動脈塞栓術(TAE)、二つを組み合わせた治療(TACE)を行っております。カテーテル治療は、細いカテーテルを使用してできる限り腫瘍を栄養する動脈のみを狙い撃ちすることで副作用を軽減しております。
C 内科治療(抗癌剤治療・分子標的薬・インターフェロン療法・放射線治療)
抗癌剤治療は切除術やRFA,カテーテル治療が困難な場合に行うことが多いです。肝細胞癌、胆管癌、膵臓癌ではそれぞれに適応のある薬剤を組み合わせて治療を進めております。肝細胞癌に対してはネクサバールなどの分子標的薬も使用し、治療成績を上げております。 B型肝炎やC型肝炎は慢性の病気であり、長い年月をかけて肝硬変から肝細胞癌を発症します。そのためインターフェロンによるウィルス排除を目的とした治療により、肝細胞癌の発症及び再発予防効果を得ております。 2012年秋からは放射線治療も可能となり、膵臓癌の再発防止効果を高めたり、癌性疼痛のコントロールを図る予定です。
D 内視鏡的治療
肝胆膵に発生するでは癌は、進行とともに胆汁が肝臓内部に溜まってしまい閉塞性黄疸をきたすことが多くなります。黄疸がある状態では治療を進めることが困難であることが多いため、黄疸を引かせる処置が必要となります。当センターでは内視鏡を使用して胆汁を体外や腸管内へ誘導する処置を行っております。また腫瘍切除が困難な場合にはステントを留置することも行っております。